無機-有機ハイブリッド化学 尾関研究室
遷移金属と酸素からなる無機高分子であるポリオキソメタレートの生成機構・構造・反応に関する研究を行っています。
研究テーマ
ポリ酸が示す分子間相互作用の解明

触媒が特定の物質(基質)のみを選択して反応を進めるとき、薬剤が特定の生体分子のみに働きかけるとき、そして分子が結晶化するとき、これらの物質(分子)の間には、お互いを認識・識別する作用が働いています。このような分子間の相互作用は、化学反応や物質の性質・構造を方向付ける大きな要因のひとつです。
特徴的な分子間相互作用を示す官能基(アミノ基やカルボキシ基など)を持つ化合物では、相互作用が働く場所はそれら官能基に限定されていますが、表面が等しく酸素原子に覆われているポリ酸においては、すべての表面原子が周囲の分子と相互作用を持つことが出来ます。
われわれは、そのようなポリ酸を対象とすることによって、どのような環境にある原子が分子間相互作用を持つのか、また、分子間相互作用が起きる場所を制御することができるのか、などを明らかにすることができると考え、研究を進めています。
これまでに、X線回折による結晶構造解析を利用して、分子間相互作用を示す原子を特定するとともに、ポリ酸の結晶化に用いる対カチオンや溶媒を選択することによって、分子間相互作用の組み換えが起きることを明らかにしてきました。さらに、X線小角散乱や多核NMR(1Hや51V)による溶液中での状態分析を行い、分子間相互作用を利用して溶液中でのポリ酸の集合状態を制御できることを示しました。
ポリ酸を利用したナノ構造の構築と放射光を利用した構造解析

原子・分子は結晶化するとき、互いを認識しながら、相互作用が最大化するように集合します。従って、分子間相互作用を利用することによって、結晶中の分子 の配列を制御することが出来ます。われわれは、ポリ酸が持つ分子間相互作用を利用して、ポリ酸ならではのナノ構造を作り上げることを目指しています。特に 500個以上の原子からなるナノメートルサイズポリ酸が構築するナノ構造に注目して研究を進めています。このように複雑な構造を決定するためにはシンクロ トロン放射光の利用が必須になりますので、そのための装置開発も行っています。
貨幣金属-ポリ酸複合クラスターの合成と生成機構の解明

分子の間の相互作用が強くなると、分子同士がしっかりと結合した複合体が得られます。ポリ酸同士あるいはポリ酸と有機小分子の間の相互作用を対象とする上記2つの研究テーマに対して、本研究テーマはポリ酸と別の種類のクラスターとの間の相互作用の解明をめざしています。ポリ酸の相手としてエチニル銀クラスターを用いた研究から、右図に示すような新奇な複合クラスターが得られることを示しました。これらの結晶および溶液中での構造や、生成機構について研究を進めています。
本研究室では、これまでに蓄積してきたポリ酸に関する知見を活用して、金属元素を位置選択的に置換することによって表面電荷分布を制御したポリ酸を利用しています。そうすることによって、エチニル銀と結合する部位を自在にコントロールできることを示しました。
さらに、109Ag, 183W, 29Si, 13Cおよび1H NMRを用いることによって、複合クラスターが溶液中でも安定に存在することを示すとともに、分析用超遠心分離器を用いた分子量測定により複合クラスターの生成機構を明らかにしてきました。
STAFF
●教 授 : 尾関 智二 Tomoji Ozeki
●Email : ozeki.tomoji@nihon-u.ac.jp
●Office : 本館7階 07140室(化学705室)
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●日本大学研究者情報はこちら
1983年 | 東京大学理学部化学科卒業 |
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1985年 | 東京大学大学院理学系研究科修士課程化学専攻修了 |
1988年 | 東京大学大学院理学系研究科博士課程化学専攻修了。理学博士号取得 |
1988年 | 米国ジョージタウン大学博士研究員 |
1989年 | 東京工業大学資源化学研究所助手 |
1995年 | 東京工業大学助教授(理学部) |
2010年 | 日本結晶学会賞 学術賞 受賞 |
2014年 | 日本大学文理学部教授 |
所属学会
日本化学会、日本結晶学会、錯体化学会
●助 手 : 石崎 聡晴 Toshiharu Ishizaki
●Email : ishizaki.toshiharu@nihon-u.ac.jp
●Office : 本館7階 07140室(化学705室)
●日本大学研究者情報はこちら
2015年3月 | 近畿大学理工学部理学科化学コース 卒業 |
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2017年3月 | 大阪大学大学院理学研究科化学専攻 博士前期課程 修了 |
2020年3月 | 大阪大学大学院理学研究科化学専攻 博士後期課程 修了 |
2020年4月 | 日本大学文理学部 助手 |