生態環境化学 橋本研究室

生態系由来の微量ガスには温室効果やオゾン分解能をもつハロカーボンや地球規模での硫黄循環に影響する硫化ジメチルなどがあります。当研究室では植物プランクトンに焦点を当て、微量ガスの生成・消失過程を分析化学や環境化学の視点から研究しています。

研究テーマ

ヨウ素系ハロカーボンの地球環境中での動態に関する研究

必須元素のヨウ素は、ヨウ化メチル(CH3I)等のハロカーボンとして海洋から大気に放出され降雨等により陸域に供給されると考えられています。そのため内陸部ではヨウ素欠乏症になりやすいなど、ヨウ素系ハロカーボンの海洋からの発生は陸上生物にとって重要な役割を担っています。また、CH3Iは下部成層圏に到達した場合、塩素の150倍のオゾン分解能をもつヨウ素ラジカルを放出するため、地球環境学的にも挙動が注目されています。

しかし、大型藻類や植物プランクトンからの生成がわずかに見積もられているものの、起源のほとんどがわかっていません。そこで当研究室では水中のヨウ素系ハロカーボンの微量分析を行い、温度・微量金属・二酸化炭素濃度などの物理化学的条件と酵素活性や共存微生物などの生化学的条件に着目してその生成機構について研究を進めていきます。

微量ガスの高感度分析法に関する研究

水試料中の揮発性成分の分析においては、パージ&トラップ法による導入が多く用いられますが粘性の高い試料の測定は困難であり、そのような試料の測定にはヘッドスペース法が用いられてきました。

しかし、ヘッドスペース法による分析感度はパージ&トラップ法よりも2ケタほど劣るとういう欠点がありました。そこで、この感度不足を解消する方法として、近年 ダイナミックヘッドスペース(DHS)法が開発されました。バイアル瓶中の気相部分の一部を採取しGCに導入する従来のヘッドスペース法とは異なり、DHS法ではバイアル瓶を攪拌して気相をパージしながら揮発性成分をトラップ管に捕集して、加熱脱着後GCへ導入します。DHS法では気相が濃縮されるため、ヘッドスペース法よりも高感度な検出が可能となります。

当研究室ではDHS法を用いた、ハロカーボン等の微量ガス化合物の高感度分析法の確立を目指しています。

植物プランクトンによる微量ガス生成に関する研究

海洋生態系では、生物量の主な部分は微小で培養が困難な植物プランクトンやバクテリアなどによって占められています。これらの微小な生物は、ハロカーボンや硫化ジメチルのような微量ガスの動態にかかわっています。

しかし、そういった微量ガスをどのような生成過程により、またどのような環境条件(水温、微量金属等)において、どれだけ生成・分解しているのかはほとんどわかっていません。当研究室では水圏から単離した植物プランクトンを用いて、培養実験から微量ガス生成種を探索し、実験を通じて微量ガスの生成メカニズムを研究しています。

STAFF

1981年 東京大学理学部化学科卒業
1983年 東京大学大学院理学系研究科化学修士課程修了
1986年 東京大学大学院理学系研究科化学博士課程修了。理学博士号取得
1986年 科学技術庁金属材料技術研究所 研究員
1990年 東京水産大学水産学部海洋生産学科(現・東京海洋大学) 助手
1996年 東京水産大学水産学部海洋環境学科 助手(組織改編に伴う異動)
2001年 静岡県立大学環境科学研究所 助教授
2006年 静岡県立大学環境科学研究所 教授
2009年 日本大学文理学部 教授

 

所属学会
日本海洋学会、日本地球化学会、日本分析化学会、日本化学会、日本内分泌撹乱化学物質学会、日本環境毒性学会、American Society of Limnology and Oceanography


    • ・助手: 奥田 祐樹 Yuuki Okuda

    • ・Email: y-okuda@nihon-u.ac.jp

    • ・Office: 本館7階 07010室(化学701室)

    • 日本大学研究者情報

    助手 奥田祐樹
2016年3月 日本大学文理学部化学科卒業
2018年3月 日本大学総合基礎科学研究科相関理化学専攻博士前期課程修了
2019年4月 日本大学文理学部化学科 助手

 

所属学会
American Society of Limnology and Oceanography