動物生理学研究室

外川 徹 准教授

大いなる変身 ーその分子メカニズムに迫る!

昆虫の体表はクチクラに覆われており,これがいわゆる「外骨格」を形成しています。昆虫は,脱皮の際に古いクチクラを脱ぎ去り,新しいクチクラを合成することで成長します。また,あるタイミングで変態を伴う脱皮を行うことで性成熟へと向かいます。この時には,形態の大きな変化とともにクチクラの様態も大きく変化します。そこで私たちは,特にこのクチクラに注目して脱皮と変態の分子メカニズムの理解を目指しています。例えば,脱皮の際には急激にクチクラが合成されますが,それはどのような遺伝子がどのように機能することで実現されているのでしょうか。また,変態を通して幼虫のクチクラから蛹のクチクラへ,さらに成虫のクチクラへと変化していきますが,この分子基盤はどのようなものなのでしょうか。このようなテーマに対し,現在は主にカイコガを実験動物として用いて取り組んでいます。


研究内容

昆虫クチクラタンパク質遺伝子クラスターにおける遺伝子発現調節

昆虫の体表はクチクラで覆われています。このクチクラは,発生段階によって,つまり例えばカブトムシの幼虫と成虫とでは,その様態が異なります。クチクラの主成分は,キチン繊維とクチクラタンパク質なのですが,このクチクラの性質の違いは,一つにはクチクラタンパク質が異なるからだと考えられています。事実,数多くあるクチクラタンパク質遺伝子の発現を調べてみると,発生段階に従って非常にダイナミックなパターンで発現していることがわかります。

クチクラタンパク質にはいくつかのグループがありますが,その中の最大のグループであるCPRは,それぞれの種において200種類ほど存在します。その遺伝子の多くは染色体上で遺伝子クラスターを形成しています。クラスターを形成しているCPR遺伝子の発現パターンを見てみると,興味深いことに,同じ発現パターンを示す遺伝子の「島」があることが分かりました。同じクラスター内でもこの「島」の外にある遺伝子は異なるパターンで発現します。
昆虫の脱皮・変態は脱皮ホルモン(エクジソン)によって調節されており,CPR遺伝子もエクジソンにより発現調節されていることが知られています。しかしながら,エクジソンのシグナルがどのようにこの「発現の島」を調節しているのかは分かっておらず,その解明に取り組んでいます。

 


【連絡先】
日本大学 文理学部 生命科学科 動物生理学(外川)研究室
■住所: 〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40
■メールアドレス:togawa.toru(at)nihon-u.ac.jp(atは@に変更してください)