陸域生態学研究室
井上みずき 准教授
生態学を基盤に植物の世界を探求! ~野外での観察・計測から始まる自然科学~
野外の植物は、その場でただ、耐えて生きているだけではありません。生物的・非生物的環境に応じて工夫を凝らして生き、子孫を残しています。その仕組みをフィールドワークに加えて遺伝子実験や栽培実験等を行うことで明らかにしていきます。
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@乗鞍岳
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種子採取
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マルハナバチ採集
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同位体測定のための精密計量
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コケモモ葉採取
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ハイマツ葉採取
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湿地での土壌水採取
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植生調査
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スギ成長量調査
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糖量測定
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PCR実験
研究内容
植物の多様な繁殖様式を明らかにするととともに、植物が他の生物(ほにゅう類・昆虫・ウイルスなど)とどのような関係を結んでいるのかを探ります。こうした知見をもとに植物の保護・森林生態系の保全にも取り組んでいます。
有性繁殖と無性繁殖の進化的関係
植物は種子を作り有性繁殖をする一方で、クローン繁殖(クローン成長とも言う)を行うものもいます。クローン繁殖とはタケのように地下茎を伸ばしてタケノコで稈を増やしたり、ヤマノイモが無数のムカゴから芽をだして増えたりする繁殖方法です。無性繁殖に比べて有性繁殖にはコストがかかるため、有性繁殖は不利であると考えられるにもかかわらず、多くの植物では有性繁殖をし続けています。これは有性繁殖のパラドクスと呼ばれ、進化生態学の主要なテーマの1つとなっています。どのような時に有性繁殖が有利となるのか、様々な植物の生活史戦略から解明していきます。
<これまで扱った材料:ヤマノイモ、オニドコロ、スギ、ササ、ヤチヤナギ、スギ、ユキツバキ、ドクダミ、ハイマツ、コケモモ>
植物とウイルスの関係
人間だけでなく、植物もウイルスに感染し病気になります。これまで農地のウイルス病については植物病理学の観点から広く研究されてきましたが、野生植物がどんなウイルスにかかるのかについてはほとんど明らかにされていません。また感染しても症状が現れないこともあるということが私たちの研究からわかってきました。そこで、森林生態系における植物とウイルスの種間相互作用やウイルスの種多様性について明らかにしていきたいと考えています。
植物の保護
地球における第6の大量絶滅期である現在、種の保存は大事な課題です。樹木種の保存には広大な場所が必要ですが、種子で長期保存可能であればコンパクトですみます。日本の樹木種子の保存のしやすさを形質から推定しています。
生態系保全
京都の芦生研究林ではシカの採食により下層植生が急激に失われているため、集水域を単位とした防鹿柵を設置しています。その柵内外の植物の多様性や水質・水生昆虫の多様性等を比較する研究を共同で行っています。シカの密度指標のモニタリングも継続中です。
【連絡先】
日本大学 文理学部 生命科学科 陸域生態学(井上)研究室
■住所: 〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40
■メールアドレス:inoue.mizuki(at)nihon-u.ac.jp(atは@に変更してください)