遺伝学研究室

間瀬啓介 教授

カイコガの研究で温故知新しています。

遺伝学(間瀬)研究室ではカイコ蛾を使った遺伝研究をしています。古くから白色の繭を作る系統以外に緑色の繭を作る系統もあり、その交配後代では複雑に分離します。現在、その原因色素であるフラボノイド分子の透過・排出に関する遺伝子の単離・同定を行っています。講義は総合科目を中心に担当しており、学科専門科目にはほとんど関与していませんが、生物学を通して学生さんの疑問や相談に応えるよう努めています。

 


研究内容

シルクを作り出す昆虫としてなじみ深いカイコガ(Bombyx mori L.)は、かつて我が国の経済を支えてきました。この虫は近縁野生種であるクワコ(Bombyx mandarina Moore)との共通祖先から家畜化された有用昆虫であり、5000年も前から中国で利用され、2世紀頃我が国に伝わったとされています。今日、私たちがよく知るカイコの繭は、白色の俵型あるいは楕円型をしています。これは人によって家畜化され、さらに好ましい特性を有するように改良されてきた結果なのです。しかしながら、これら遺伝子変異の結果の原因はほとんど解明されていません。

カイコガ染色体置換系統の作出

先に述べた複雑な遺伝様式を示す形質を解析するために、独立行政法人農業生物資源研究所との共同研究で、カイコの染色体置換系統を作出しています。この系統は異なる特徴を持つ2系統間の交配により、染色体が1本(あるいは1対)だけ置き換わった系統です。この様な系統はイネなど栽培植物において、有用遺伝子単離のための強力な材料として使われています。遺伝病解析に使われているマウスのコンソミック系統もこれにあたります。

 


カイコガの緑繭発現メカニズムの解明

クワコの繭がそうであるように、本来のカイコの繭色は緑色であろうと考えられます。それが人為選抜によって白色繭が定着していったのでしょう。白色はいかなる色にも染色するのに向いており、また、日本人は比較的白を神聖な色として見ていたせいかもしれません。この緑色は桑の葉に由来するポリフェノールの一種フラボノイド類によるものであり、近年、その強い抗酸化作用や紫外線の吸収効果が話題となりました。カイコの蛹は繭にその色素を加えることによって、紫外線などから自身を守っているのかもしれません。この繭の緑色化には複数の遺伝子が関わっており、単純な遺伝実験では様々な緑色程度に分離します。そこで染色体置換系統を作出する過程で、それぞれの緑色程度に関わる遺伝子を同定してきました。現在、それら遺伝子の実態解明に向けて、遺伝学的、分子生物学的、生化学的手法を駆使して研究しています。

 


【連絡先】
日本大学 文理学部 生命科学科 遺伝学(間瀬)研究室
■住所: 〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40
■メールアドレス:mase.keisuke(at)nihon-u.ac.jp(atは@に変更してください)