鈴木生郎 准教授
分析哲学(現代の形而上学および関連する倫理学的問題)
日本科学哲学会
科学基礎論学会
応用哲学会
西日本哲学会
分析哲学は英米圏において現在主流となっている哲学的伝統ですが、私が専門としているのはその中でも形而上学と呼ばれる分野です。そして、形而上学と呼ばれる分野の中でも、特に、物や人が時間を通じて同一のまま存在し続けること(通時的同一性)の問題を集中的に研究しています。もう少し具体的に言えば、物や人がどこかの時点で存在し始め、時間を通じて部分やその特徴を変化させ、やがてどこかで存在しなくなるそのあり方について、よりよい理解の仕方を明らかにすることが目標です。物や人が時間を通じて存在し続けるというのはひどく当たり前の事実なので、それを理解するためにそんなに考えなければならないことがあるのかと感じるひともいるかもしれませんが、実際には通時的同一性には様々な問題やパラドックスがあることが知られていて、問題が生じない適切な理論を作ることはけっこう大変です。様々な要素を調整しながら立場を考えるという点では、少し職人的な仕事に近いところがあるかもしれません。
また、物ではなく人の場合には、「人が存在し始め、一定期間同一のまま存在し、やがて存在しなくなる」というのは、要するに人が生まれて死ぬということです。その関係から、生死に関わる形而上学的・倫理学的問題にも関心を持っています。その中でも現在研究している問題としては、死ぬことの悪さに関わる問題(自分が死ぬことが自分にとって悪いとしたら、いつどのように悪いのかという問題)や、不死の望ましさの問題(死なないことは本当によいことなのかという問題)、そして、私たちの人生が持ちうる価値の問題(何がよい人生/意味ある人生なのかという問題)などがあります。
私自身の専門とする分野は少し理論的な側面が強いものですが、現代の分析哲学はもっと多様です。つまり、一時期そうであったように、分析哲学は言語や論理、存在や認識の問題といった高度に抽象的な問題だけに関わるのではなく(もちろんこれらの分野が重要であることに変わりはありませんが)、より幅広い問題にもアプローチしています。こうした多面的な側面をもつ分析哲学の魅力を様々な形でお伝えできればとも思っています。